いまにも雨が落ちそうなどんよりとした鼠色の空が広がっていた。
9月だというのに、30度を超える異常な蒸し暑さが続くその日、
東京の東
の端、JR南千住駅に降り立った。
これから始まる恐ろしい体験の数々を予感するかのように歩みは鈍く、
ためらいながら駅を南に進む。
3分ほどで奥州・陸羽街道に行く手を阻まれるが、街道の向こう側に佇むのが、
かの小塚原回向院だ。
ここが怪奇巡礼行の始まりに相応しい
関東最大、いや日本最強の心霊スポットなのだ(詳細は第1話へ続く)。
ところで、われわれが平和な営みを続けるこの国の土地のいたるところが怪奇に満ち溢れ、
恐ろしい怨念が渦巻いているのをご存知だろうか。
死屍累々、荒涼とした歴史が幾重にも連なる大地の上にわれわれの日常生活がある。
どこへ逃げても逃げ切れるものではない。
数百年、数千年いや数万年にわたるおびただしい人間の怨みで、
日本のあらゆる土地が穢れている。
あなたの住むところもそうであろう。
たとえば、近所を注意深く観察して欲しい。ひっそりと薄ら寒い小さな墓地が必ずあるはずだ。
数百年もさかのぼれば、あなたの家もその墓地の一角だったかもしれない。
あなたに、この怪奇を否定する根拠は何一つない。
ハイテク都市東京でも同じである。高層ビル、にぎやかな商店街。
実はその昔、そこは古戦場で、地下は関東武士の無数の屍と血で固められているかもしれない。
考えただけでもぞっとするではないか。
怪奇巡礼行は、1000年に一度の世紀の区切りを期してスタートする心霊を鎮める旅である。
華やかな都市、町のそこここに見え隠れする怪奇、心霊を白日のものとして
それらの土地を鎮めるのである。
巡礼行で出会った恐ろしい体験を、逐一少しずつご報告していこう。
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